<メッセージ> |
●ヨセフの辿った道 |
先週に引き続き、ヨセフの人生を辿っていきます。 |
|
ヨセフは12人兄弟です。 |
下の二人、ヨセフとベニヤミンだけがラケルが産んだ子供です。 |
兄10人は腹違いの兄弟です。 |
父ヤコブはヨセフを溺愛しました。 |
ヨセフを憎んだ兄達は、ヨセフを商人達に売ってしまいます。 |
エジプトに連れて来られたヨセフは奴隷にされ、さらに濡れ衣を着せられて |
監獄に入れられてしまいます。 |
13年もの年月が流れます。 |
転機が訪れました。 |
ヨセフはファラオの夢を解いたことによって、エジプトを治める職に抜擢され |
たのです。 |
ヨセフが解き明かしたように、7年間の豊作の後に飢饉が襲ってきました。 |
けれどもエジプトには食料がありました。 |
ヨセフが豊作の間に備蓄させたからです。 |
|
●兄達が来る |
飢饉はエジプトだけではなく広い地域に広がりました。 |
|
周りの国々からも、たくさんの人達が食料を求めて、エジプトにやってきました。 |
|
ある日のことです。 |
ヨセフの前にあの10人の兄達が現われたのでした。 |
穀物を買いに来たのです。 |
ヨセフはすぐに兄達と気付きました。 |
しかし兄達はヨセフだとは気付きません。 |
ヨセフはそしらぬ振りをして「お前達は回し者だ」と決めつけます。 |
身の潔白を証明するために、一番末の弟を連れてこい、それまではひとりを |
人質にする、と言いました。 |
9人は、シメオンを残し、穀物を得て父ヤコブの元に帰りました。 |
|
●2度目のエジプト行き |
けれども、また穀物がなくなってしまいました。 |
ベニヤミンを失いたくないと渋る父を説得して、9人の兄達はベニヤミンを |
連れてヨセフのところにやってきました。 |
|
人質となっていたシメオンも解放され、ヨセフの家で歓待された兄弟達は、 |
再び穀物を手に入れて、ほっと安堵して11人揃って帰路につくのです。 |
|
●連れ戻される |
ところが11人が町を出てまだ遠くに行かないうちに、追っ手が来ました。 |
ベニヤミンが銀の杯を盗んだ、ということで連れ戻されます。 |
実は、ヨセフが密かにベニヤミンの荷物の中に銀の杯を入れさせていたのです。 |
|
「杯を見つけられた者だけが、わたしの奴隷になればよい。ほかのお前たちは |
皆、安心して父親のもとへ帰るがよい。」 |
というヨセフに対してユダが懇願します。 |
ページの上に戻る |
●ユダの懇願 |
44章27節です。 |
「あなたさまの僕である父は、『お前たちも知っているように、わたしの妻は |
二人の息子を産んだ。ところが、そのうちの一人はわたしのところから出て |
行ったきりだ。きっとかみ裂かれてしまったと思うが、それ以来、会っていない。 |
それなのに、お前たちはこの子までも、わたしから取り上げようとする。もしも、 |
何か不幸なことがこの子の身に起こりでもしたら、お前たちはこの白髪の父を、 |
苦しめて陰府に下らせることになるのだ』と申しました。 |
今わたしが、この子を一緒に連れずに、あなたさまの僕である父のところへ、 |
帰れば父の魂はこの子の魂と堅く結ばれていますから、この子がいないことを |
知って、父は死んでしまうでしょう。そして、僕どもは白髪の父を、悲嘆のうちに |
陰府に下らせることになるのです。・・・何とぞ、この子の代わりに、この僕を |
御主君の奴隷としてここに残し、この子はほかの兄弟たちと一緒に帰らせて |
ください。 |
この子を一緒に連れずに、どうしてわたしは父のもとへ帰ることができましょう。 |
父に襲いかかる苦悶を見るに忍びません。」 |
|
●身を明かす |
ヨセフはこらえきれなくなりました。 |
声あげて泣き、言います。 |
「わたしはヨセフです。お父さんはまだ生きておられますか。」 |
|
兄弟たちは驚きのあまり、答えることができませんでした。 |
穀物を買いに来ただけなのに予期していなかった出来事が次々に起こり、今 |
恐ろしい事態に追い込まれひざまずいて嘆願しているエジプト国の権力者が、 |
ヨセフだったとは。 |
|
この事実は兄達にとっては喜びとはなりませんでした。 |
むしろ恐ろしいことです。 |
自分たちがかつてした悪が暴かれるのです。 |
自分たちがひどい目に遭わせた者が、今は絶大な権力を持つ者として立って |
いるのです。 |
兄達をどのようにでもすることもできるのです。 |
|
●和解 |
恐れる兄達にヨセフは言います。 |
「わたしはあなたたちがエジプトへ売った弟のヨセフです。」 |
兄達に自分たちがした悪をはっきりと思い出させています。 |
|
その上でヨセフは言います。 |
45章5節です。 |
「しかし、今は、わたしをここへ売ったことを悔やんだり、責め合ったりする |
必要はありません。命を救うために、神がわたしをあなたたちより先にお遣わ |
しになったのです。・・・神がわたしをあなたたちより先にお遣わしになったの |
は、この国にあなたたちの残りの者を与え、あなたたちを生き永らえさせて、 |
大いなる救いに至らせるためです。 |
わたしをここへ遣わしたのは、あなたたちではなく、神です。神がわたしを |
ファラオの顧問、宮廷全体の主、エジプト全国を治める者としてくださったの |
です。」 |
|
ヨセフはこれまでの苦難の意味を見つけることが出来ました。 |
それは神様のなさったことであった、と受け取ることで、ヨセフは兄達を受入 |
れたのでした。 |
|
こうして父ヤコブと一家はエジプトに来て、住むことになりました。 |
|
●父ヤコブの死 |
月日がたって父ヤコブが亡くなりました。 |
すると兄達に恐れが湧き上がってきました。 |
ヨセフはお父さんのために自分たちを赦してくれていた。 |
でもお父さんが死んでしまったので、ヨセフがことによると自分たちをまだ恨み、 |
昔ヨセフにしたすべての悪に仕返しをするのではないかと思ったのです。 |
兄達は再びヨセフに赦しを請います。 |
|
●神は悪を善に変える |
ヨセフは兄たちに言います。 |
「あなたがたはわたしに悪をたくらみましたが、神はそれを善に変え、多くの |
民の命を救うために、今日のようにしてくださったのです。」 |
|
読んでいる限りにおいては、感動的な言葉です。 |
|
でも、この言葉をあなたは言えますか? |
自分に悪をたくらみ、ひどい目に遭わせた人に対して、この言葉が言えますか? |
|
●涙を流した |
ヨセフがこの言葉を言うまでに、どれほどの心の葛藤があったことでしょうか。 |
|
兄達がヨセフの前に現われてから、ヨセフは何度も何度も泣いているのです。 |
|
初めて兄達が現われた時、とてもとても兄達を受け入れることができませんで |
した。 |
厳しい口調で兄達を疑う言葉を吐きました。 |
今やヨセフはエジプトの国を治めるほどの人物になっています。 |
結婚もし、ふたりの子供も与えられました。 |
幸せな暮らしをしています。 |
「毎日重要な職務に携わり、そのことに没頭して暮らしていました。 |
けれども、その後どんなに成功し順調に生きていても、それでめでたしめでた |
しとはならないのです。 |
そういうことによって傷が癒えることはないのです。 |
兄達が現われた時、心の奥深くに押し込んでいた心の傷口が開きました。 |
血が流れます。 |
|
兄達はヨセフが聞いているとは知らずに言いました。 |
「ああ、我々は弟のことで罰を受けているのだ。弟が我々に助けを求めたとき、 |
あれほどの苦しみを見ながら、耳を貸そうともしなかった。それで、この苦しみ |
が我々にふりかかった。」 |
「あのときわたしは、『あの子に悪いことをするな』と言ったではないか。お前 |
たちは耳を貸そうともしなかった。だから、あの子の血の報いを受けるのだ。」 |
|
ヨセフは兄達から遠ざかって泣きました。 |
|
●ベニヤミンを残す |
2度目に兄達がベニヤミンを連れてやってきた時、ヨセフは弟懐かしさに泣き |
ました。 |
でも兄達の前では平静を装い、自分を明かすことはしません。 |
心を許してはいないのです。 |
|
ベニヤミンの荷物に銀の杯を入れたのは、ベニヤミンだけを手元に残すため |
でした。 |
兄達はベニヤミンを残して帰っていくだろう、あの時自分にしたように・・・ |
|
ところが兄達は全員ベニヤミンと一緒に奴隷になると言います。 |
べニヤミンだけを残してあとの人は帰りなさいと言うと、ユダは自分がベニヤミン |
の代わりに奴隷になると言いました。 |
ユダが心いっぱいの嘆願をします。 |
|
●身を明かす |
ヨセフはもはや平静を装っていることが出来ませんでした。 |
声をあげて泣きました。 |
|
エジプトに売られて今日までこらえにこらえてきた諸々の感情が一気に吹き |
出しました。 |
|
ヨセフは自分がヨセフであることを明かします。 |
あの時以来、初めて兄達とヨセフが、兄としてヨセフとして向かい合うことに |
なったのです。 |
|
驚き恐れる兄弟達を前に、ヨセフはこれまでのことがすべて神様の救いの |
ご計画の中で起こった事であったことを悟ったのでした。 |
|
●癒す涙 |
ヨセフは、弟ベニヤミンの首を抱いて泣きました。 |
ベニヤミンもヨセフの首を抱いて泣きました。 |
ヨセフは兄弟たち皆に口づけし、彼らを抱いて泣きました。 |
|
泣けるということは良いことです。 |
凍っていた心が溶かされていきます。 |
|
そしてやがて父ヤコブがエジプトにやってきました。 |
ヨセフは父を見るやいなや、父の首に抱きつき、その首にすがったまま、しば |
らく泣き続けました。 |
その涙は、ヨセフを癒す涙でした。 |
|
●解決されないもの |
こうして父と兄達はヨセフと共にエジプトで暮らすようになりました。 |
平穏な日々が続きました。 |
一見平和に暮らすヤコブ一族です。 |
|
でも心の深い深い所になお解決されないものがあったようです。 |
父ヤコブが死ぬと兄弟達に不安と恐れが起こってきました。 |
父の遺言であると言って、咎を赦してくださいと、言ってよこす兄達でした。 |
|
●ヨセフの涙 |
「これを聞いて、ヨセフは涙を流した。」 |
と聖書は記しています。 |
この涙は何だったのでしょう。 |
「赦しているのに、お兄さんたちは自分を信じてくれていないのか」と悲しく |
なったのでしょうか。 |
でもその程度のことでは涙は流さないでしょう。 |
|
兄達の言葉は、兄達ばかりでなく自分の中にも解決されていないものが |
残っていることを、ヨセフに気付かせたのでした。 |
|
あの時、確かに兄達のしたこと、その後に起こったすべてのことが、神様の |
救いのご計画の中でなされたことを悟った。 |
そのことは、今でも確かにそうだと思っている。 |
だからこれまで兄達を赦し、仲良くやってきた。 |
|
ヨセフは自分でももうすべては解決していると思っていたのです。 |
でも、なお癒されていない傷があったのでした。 |
|
この傷を人は治すことが出来ません。 |
自分でも治すことが出来ません。 |
その治すことが出来ない、心の深みで痛んでいるところに、神様が語りかけて |
くださるのです。 |
「辛かったね、悲しかったね。あなたが受けなければならなかった悪を、わたし |
が善に変えてあげよう。そして人々を救うわたしの計画に使おう。」 |
|
神様の愛に触れて、ヨセフは涙を流すのです。 |
人は神様の愛に抱かれた時、涙を流します。 |
|
●私達 |
皆さんは辛い悲しい目にあってこられたでしょうか。 |
自分はそれを乗り越えてきた、もう解決していると思っていたのに、本当は |
そうではなかったことに気付くことがあるかもしれません。 |
受けた傷は心の奥深くに沈んでも、何かの折に痛むのです。 |
|
無理に自分の気持にふたをすることはありません。 |
そのままに、自分を神様にお渡ししたいと思います。 |
|
涙を流すことがあるでしょう。 |
時間も長くかかるでしょう。 |
でもついには、すべての人々を救う神様のご計画の中に、自分が用いられて |
いることを知るのです。 |
|
私達の辿る人生は神様の救いのご計画に用いられていきます。 |
無駄な人生はありません。 |
どの人生も神様が用いてくださいます。 |
ヨセフの人生がそうであったように、私達の人生のすべてを救いのご計画に |
用いてくださいます。 |
|
●結語 |
色々なことが起こってきます。 |
でも、悪を善に変えてくださる神様がおられます。 |
その愛の御手の中で、私達は生かされているのです。 |
ページの上に戻る |