<メッセージ> |
●ルツ記 |
今日はルツ記から、主の恵みのメッセージを聞いていきたいと思います。 |
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日本にもルツさん、ルツ子さんという名前の方が何人もおられます。 |
ルツのようであってほしいと祈りを込めて、生まれてきた我が子に両親がつけ |
た名前です。 |
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本当にルツ記ほど美しい書は他にはないと言っていいほどです。 |
舞台になっているのは実りの時を迎えた畑です。 |
牧歌的な景色です。 |
それ以上に心が和むのは、出てくる人達全員の間に、やさしい暖かい心が通 |
い合っていることです。 |
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短い書ですから、どうぞ後で全部を読んでみてください。 |
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●あらすじ |
士師が世を治めていた頃のことです。 |
ベツレヘムにエリメレクと妻ナオミ、そして二人の息子が住んでいました。 |
ところがこの地に飢饉が襲い、一家はモアブに移りました。 |
徒歩でも3日くらいで行ける所です。 |
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しかしエリメレクは、ナオミと二人の息子を残して死んでしまったのです。 |
その後息子達は、モアブの女を妻にしました。 |
けれども10年ほどしてふたりの息子も死んでしまったのです。 |
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女だけが3人残されました。 |
ナオミはベツレヘムに帰ることにしました。 |
嫁のルツは自分の民を離れ、ナオミについて行きました。 |
そしてボアズの妻となり、男の子を授かったのでした。 |
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●背景 |
この出来事の背景になっている社会状況を見ておきましょう。 |
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イスラエルの民にとって最も大切なことは、土地を受け継ぐこと、子孫が続いて |
いくことです。 |
それは主がアブラハムにされた最初の約束に基づいているでしょう。 |
主はアブラハムに言われたのでした。 |
「見えるかぎりの土地をすべて、わたしは永久にあなたとあなたの子孫に与え |
る。あなたの子孫を大地の砂粒のようにする。大地の砂粒が数えきれないよう |
に、あなたの子孫も数えきれないであろう。」 |
そのようにしてイスラエルは地上のすべての民が祝福に入る源となる使命を |
果たすのです。 |
それで、当時は次のような定めがありました。 |
夫が子供なしで亡くなった場合、残された妻は夫の兄弟の一人の妻になり、 |
その間に生まれた長男は法的に亡くなった夫の子供として認められます。 |
これによって亡くなった兄弟の家名を継がせるのです。 |
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また、もしある人が生活に困り果てて土地を処分しなければならなくなった場 |
合、一番近い親戚が土地を買い戻さなければなりませんでした。 |
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これが当時のイスラエル社会の決まりです。 |
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●モアブ |
ところでルツはモアブ人です。 |
イスラエルとモアブの関係はどうだったのでしょうか。 |
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士師の時代にはモアブがイスラエルを支配したり、モアブがイスラエルに屈服 |
したりしていました。 |
けれどルツ記においては、自由に行き来が出来、結婚も出来た様子です。 |
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このような社会の状況の中で、ナオミとルツは生きたのです。 |
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●愛で結ばれている |
ナオミとふたりの嫁は深い愛情で結ばれていました。 |
嫁を愛すればこそ、ナオミはふたりに言うのです。 |
「自分の里に帰りなさい。あなたたちは死んだ息子にもわたしにもよく尽くして |
くれた。どうか主がそれに報い、あなたたちに慈しみを垂れてくださいますよう |
に。どうか主がそれぞれに新しい嫁ぎ先を与え、あなたたちが安らぎを得られ |
ますように。」 |
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モアブに留まること、自分の民、自分の神のもとに帰って行くことも、主の慈し |
み、主が新しい嫁ぎ先を与えてくださる、主が安らぎを与えてくださる。 |
主の慈しみは、主の安らぎは、民族を越えてモアブをも覆っています。 |
広い広い主の慈しみが示されています。 |
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●慕う |
ルツはナオミと一緒にベツレヘムに行くことを選びました。 |
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ルツを突き動かしたのは、ナオミを慕う深い思いです。 |
夫とふたりの息子まで失ったナオミを一人にしてはおけない、 |
命果てるまで、一緒に居る。 |
「わたしは、あなたの行かれる所に行き、お泊まりになる所に泊まります。 |
あなたの民はわたしの民、あなたの神はわたしの神。 |
あなたの亡くなる所でわたしも死に、そこに葬られたいのです。」 |
と言っています。 |
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ナオミを愛するから、ナオミの民をわたしの民とする、ナオミの神をわたしの神 |
とする。 |
ふたりの愛の中で自然に、主なる神をわたしの神とすることが起こったのでし |
た。 |
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目をつり上げて |
「わたしはモアブの神を捨てます。主なる神を信じます。」と宣言するのではな |
い。 |
主の深い慈しみの中で、すべてが運ばれていきます。 |
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●ナオミではなくマラ |
女が一人で生きていくことができない時代です。 |
夫を失い生きるすべを失ったふたりの女が、肩寄せ合って旅を続けます。 |
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10年ぶりにベツレヘムに帰ったナオミと異郷の地に来たルツ。 |
悲しい帰郷です。 |
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ナオミが言います。 |
「どうか、ナオミ(快い)などと呼ばないで、マラ(苦い)と呼んでください。全能者 |
がわたしをひどい目に遭わせたのです。 |
出て行くときは、満たされていたわたしを、主はうつろにして帰らせたのです。 |
なぜ、快い(ナオミ)などと呼ぶのですか。主がわたしを悩ませ、全能者がわた |
しを不幸に落とされたのに。」 |
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昔のことが思い出される。 |
夫もかわいい子供達もいたのに・・・ |
なぜですか。 |
なぜこんなにつらい目に遭わなければならないのですか。 |
これからどうやって生きていけばいいのですか。 |
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わたしはナオミではない、マラだ。 |
悲痛な言葉です。 |
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●落ち穂拾い |
ふたりは食べていかなければなりません。 |
ルツは落ち穂を拾いに行きました。 |
レビ19章にはこのように記されています。 |
「穀物を収穫するときは、畑の隅まで刈り尽くしてはならない。収穫後の落ち穂 |
を拾い集めてはならない。ぶどうも、摘み尽くしてはならない。ぶどう畑の落ち |
た実を拾い集めてはならない。これらは貧しい者や寄留者のために残してお |
かねばならない。わたしはあなたたちの神、主である。」 |
寄留者であるルツに出来る唯一のことは落ち穂を拾うことでした。 |
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●ボアズ |
ルツは畑に出かけました。 |
たまたま行った畑が、ボアズの畑だったのです。 |
ボアズはナオミの死んだ夫エリメレクと縁続きの人で、エリメレクの家を絶やさ |
ないようにする責任のある人の一人だったのです。 |
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ボアズはルツにとても親切にしてくれました。 |
ボアズはルツに言っています。 |
「主人が亡くなった後も、しゅうとめに尽くしたこと、両親と生まれ故郷を捨てて、 |
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全く見も知らぬ国に来たことなど、何もかも伝え聞いていました。どうか、主が |
あなたの行いに豊かに報いてくださるように。イスラエルの神、主がその御翼 |
のもとに逃れて来たあなたに十分に報いてくださるように。」 |
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人が「たまたま」と思う出来事は、主の導きです。 |
ボアズの畑に導かれたことによって、ルツの将来が開かれていきました。 |
主はその御翼のもとに逃れてくる人を包み込み、助け生かしてくださるのです。 |
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●ボアズの妻となる |
ボアズは当時の定めに従ってルツを娶りました。 |
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やがてルツに男の子が生まれました。 |
女たちがナオミに言いました。 |
「主をたたえよ。主はあなたを見捨てることなく、家を絶やさぬ責任のある人を |
今日お与えくださいました。どうか、イスラエルでその子の名があげられますよ |
うに。」 |
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この子にオベドという名前がつけられました。 |
オベドはエッサイの父となり、エッサイはダビデの父となりました。 |
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そして、イエス・キリストへと繋がっていくのです。 |
マタイによる福音書に記されているイエス・キリストの系図にはこのように記さ |
れています。 |
「ボアズはルツによってオベドを、オベドはエッサイを、エッサイはダビデ王をも |
うけた。」 |
そして系図が続いていって |
「ヤコブはマリアの夫ヨセフをもうけた。このマリアからメシアと呼ばれるイエス |
がお生まれになった。」 |
と記されていきます。 |
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●ナオミとルツの人生 |
ナオミとルツが生きた人生、それは幸せ一杯の人生ではありませんでした。 |
ナオミ―快いではなく、マラ―苦い人生でした。 |
夫を亡くし子を亡くし、生きるすべもなく肩を寄せ合っている2人でした。 |
この2人を主なる神はその御翼で覆い養ってくださったのです。 |
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●社会の中で |
この2人の女性は、社会の仕組みの中で、定めに従って生きていきます。 |
社会の定めにあずかることによって、生きる道が与えられたのでした。 |
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声を上げることもなく、社会を変革するのでもなく、置かれている社会の片隅で、 |
慎ましく生きた2人でした。 |
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2人はイエス・キリストの誕生に自分達が与ることになることを知りません。 |
ただただ苦労の多い人生を主に守られて生き、死んでいったのでした。 |
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●光 |
でも、ルツ記を読んでいると、ナオミとルツをあたたかい光が包んでいるのを感 |
じます。 |
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時代は士師の時代、国はなくそれぞれが自分の目に正しいと思うことをしてい |
た時代です。 |
主の目に悪とされることを行なう―外敵が襲ってくる―士師が立てられ民を救 |
う―士師が死ぬとまた主に背く。 |
それが繰り返されている世は、絶えずおびえ、憎み、殺し、主なる神に逆らう暗 |
闇の世界でした。 |
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その中で、民族の違いを超えて互いに思いやる嫁と姑。 |
ほっこりとするやさしい、あたたかい光が、ここには差しています。 |
この光はやがてイエス・キリストの誕生となって、すべての人々を照らすのです。 |
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●私達の物語 |
ナオミとルツの物語は、私達の物語です。 |
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私達はこの時代に生れ、この社会の仕組みの中で生きています。 |
ナオミではなく、マラの人生を歩んできたのでした。 |
社会状況を変えることも出来ず、人に知られることもなく世の片隅で生きてい |
ます。 |
置かれたところで慎ましく生きています。 |
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けれども私達もまた、神様の救いの御計画の中に必要な人として置かれてい |
るのです。 |
今はわからないかもしれない。 |
ナオミとルツがイエス・キリストの誕生に繋がっていることを知ることがなかっ |
たように、私達も私達の人生がどこに繋がっていくのか知ることは出来ません。 |
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けれども私達は今キリストの光の中に置かれています。 |
やさしいあたたかい光が私達を包んでいます。 |
その光の中で、私達の人生も主に用いられていくことを信じることが出来ます。 |
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●結語 |
私達もまたナオミとルツの物語を書き続けさせていただいています。 |
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